誘電率εまたは比誘電率DCは、セラミック物質の絶対誘電率と真空の誘電率(ε0 = 8.85 × 10-12 F/m)の比率です。ここで、絶対誘電率は電界内での分極率を測定したものです。電界および電気変位の向きと誘電率の依存性は、対応する添字で表されます。
例:
ε33T:力学的応力が一定の場合に分極方向(軸3方向)に電界を印加した時の分極方向の比誘電率(T = 0、「自由」誘電率)
ε11S:変形が一定の場合の軸1方向の電界および電気変位(S = 0、「固定」誘電率)
「ピエゾ」という言葉は、圧力を意味するギリシャ語から生まれました。1880年、ジャックとピエールのキュリー兄弟が石英やトルマリンなど多くの結晶で圧力により電荷が生じることを発見し、この現象に「圧電効果」という名前をつけました。後に彼らは、電界により圧電体を変形させられることを発見します。この効果は、「逆圧電効果」と呼ばれています。
科学者達が、電界を加えた際にチタン酸バリウムが有用なスケールの圧電性を示すことを発見したことで、 >>圧電セラミックにより産業は大きく進歩しました。
今日、圧電効果は、ライター、ラウドスピーカー、信号変換器など数多くの日用品で利用されています。また、燃焼機関でピエゾ制御式の噴射弁を用いることで遷移時間が短縮され、滑らかさと排気ガスの質が大きく改善されるため、ピエゾアクチュエータ技術は自動車技術でも利用されています。
圧電体の表面に圧力をかけると、電荷が生じます。この直接圧電効果(発電機またはセンサー効果とも呼ばれる)により、力学的エネルギーが電気エネルギーに変換されます。
これとは逆に、この種の物質に電圧を印加すると、「逆圧電効果」により長さが変化します。このようなアクチュエータ効果では、電気エネルギーが力学的エネルギーに変換されます。
圧電効果は、単結晶体と多結晶強誘電性セラミックの両方で生じます。単結晶体では、結晶格子の単位格子の構造に存在する非対称性、つまりキュリー温度TCで形成される極性軸が、この効果の生じる条件となっています。
圧電セラミックはさらに自発分極を備えており、単位格子の正電荷密度と負電荷密度が互いに分離しています。同時に、自発分極の方向に単位格子の軸が伸長して、自発ひずみが生じます。
このためには、数kV/mmという強力な電界を印加し、それまで秩序のなかったセラミック化合物に非対称性を生じさせます。この電界により、自発分極の向きが変化します。同時に、極性場の方向に沿った向きの分域は成長し、異なる向きの分域は収縮します。結晶格子内で、分域壁の向きが変化します。
分極後、再配向された分域の大部分は、電界を加えない状態でも保持されます。ただし、少数の分域壁は、内部の力学的応力により元の向きに戻されます。
セラミックは、元の分極場よりも弱い電界を加えると常に伸長します。この効果の一部は結晶格子内のイオンが圧電移動することによるものであり、内的効果と呼ばれます。
外的効果は、単位格子の可逆的な強誘電再配向に基づいています。この効果は駆動場の強度が増すと増大するものであり、強誘電性ピエゾセラミックが持つ非線形のヒステリシスおよびドリフト特性の大きな原因となっています。
上記の関係式が適用されるのは、電気振幅および機械振幅が小さい場合(いわゆる小信号値)のみに限られています。この範囲では、力学的な弾性変形Sまたは応力Tと電界Eまたは電束密度Dの関係は線形であり、係数の値は一定となります。
これらの小信号係数は材料データ表に記載されています。
各方向を軸1、2、3(直交座標系のX、Y、Z軸に相当)で示します。直交座標系ではU、V、Wと呼ばれる各回転軸は、4、5、6で示しています。
分極の方向(軸3)は、2つの電極間に強力な電界を印加することによる分極プロセス中に生じます。圧電体の最大変位は、この方向で得られます。
圧電体には異方性があるため、対応する物理量はテンソルで表されます。このため、圧電係数にはこれに応じて添字が付けられています。
振動を励起された圧電体の電気機械的挙動は、電気的等価回路図で表すことができます。
C0は誘電体の静電容量です。C1、L1、R1で構成される直列回路により、弾性変形、有効質量(慣性)、内部摩擦により生じた力学的損失などの力学的性質の変化を表します。ただし、このように振動回路を描写できるのは、機械的な固有振動に近い周波数に対してのみです。
圧電体のパラメーターの大部分は、共振時の試験体のインピーダンスを測定することで求められます。圧電パラメーターを求めるには、直列共振と並列共振を使用します。これらのパラメーターは、最小インピーダンスfmおよび最大インピーダンスfnに近い近似となります。