PICMAピエゾアクチュエータで実際に使用するピエゾセラミックは、オールセラミック絶縁層により、湿度およびリーク電流の増加による故障から保護されています。PICMAアクチュエータはモノリシックピエゾセラミックブロックを有しており、過酷な環境条件下でも高い信頼性を発揮し、桁違いに長い寿命を実現しています。
この無機質のセラミック保護層のおかげで、PICMA多層アクチュエータはポリマー皮膜アクチュエータよりはるかに高い性能を誇ります。PICMA多層ピエゾアクチュエータには、>> 変位モードの異なる数多くのデザインがあります。
- 広い温度範囲
キュリー温度が320 °Cと非常に高いため、従来の多層アクチュエータの限界である80 °Cを超え、150 °Cまでの温度範囲で使用可能です。PICMAピエゾアクチュエータは、トラベルレンジは短くなりますが低温下でも動作します。 - 最適な超高真空対応性
絶縁や電気接触用に無機物のみを使用することで気体放出をなくして高いベークアウト温度に対応し、超高真空環境での用途に最適な条件を備えています。 - 磁界内で中性
アクチュエータはすべて非強磁性材料のみを使用して製造されているため、残留磁気は数ナノテスラ台と非常に小さく抑えられています。
内部電極とピエゾセラミックを一緒に焼結(同時焼結技術)することで、モノリシックなピエゾセラミックブロックを実現しました。無機質なセラミック絶縁層により水分子の侵入を防いでおり、寿命はポリマー皮膜のみの多層アクチュエータに比べて桁違いに延長されています(図2)。同時に、損傷しやすい内部電極を機械的なダメージや汚染から確実に保護しています。
機械的張力の緩和
PICMAアクチュエータの側面はスロットが設けられており、スタックの受動領域に過度な機械的引張応力がかかり、アクチュエータの破損をもたらす電気的破壊の原因となる制御不能な膨張性亀裂が生じるのを効果的に防止しています(図3)。
また、外部端子板を蛇行したデザインとすることで、過度な動的負荷がかかった場合でもすべての内部電極との安定した電気的接触を確保しています(図4)。
DC動作時の寿命
一般に、ナノ精度の位置決め用途では、一定の電圧を長期間にわたりピエゾアクチュエータに印加します。DC動作モードでは、寿命は主として大気湿度に左右されます。湿度と電圧が非常に大きい場合、化学反応が生じて水分子が放出され、この水分子によりセラミック化合物が脆化し破損する可能性があります。
入念な試験により、PICMA積層アクチュエータの寿命を計算するモデルが作成されています。実際の使用条件下では、環境温度、相対湿度、印加電圧レベルの各要因を考慮に入れる必要があります。
時間単位の平均寿命は、以下の公式から簡単に推定することができます。
電圧が下がると、寿命は指数関数的に増加します。たとえば、80 V (DC)での予測寿命は100 V (DC)の時のものの10倍となります。
この計算を利用することで、すでに設計段階にある新たな用途を寿命の点で最適化することも可能です。その際には、駆動電圧を下げたり、保護空気やアクチュエータの封止により温度および大気湿度をコントロールすることが非常に重要です。
動的な連続動作時の寿命(AC)
迅速に電界の切り替わる周期的荷重と高い制御電圧 (通常 >50 Hz、>50 V) は バルブ や ポンプなどの応用では一般的な条件です。こうした条件下でも、ピエゾアクチュエータは非常に大きな故障間サイクル数を達成できます。
この場合、ピエゾアクチュエータの寿命に最も影響する因子は電圧と信号の形状です。一方で、湿度の影響はピエゾセラミックの自己発熱により局所的に緩和されるため無視できるものになります。
産業用途に適合
PICMAピエゾアクチュエータの堅牢性は、非常に高い制御周波数を用いた各種試験により実証されています。プリロード付きのPICMAアクチュエータ(5 mm × 5 mm × 36 mmサイズ)を、圧縮空気冷却装置を使用した室温下において、周波数が1157 Hz (1日あたり108サイクルに相当します)で単極電圧120 Vの正弦波信号により動作させました。1010動作サイクル後においても故障はまったく生じず、変位の有意な変化も認められませんでした。
宇宙での使用に対応

NASAによるパフォーマンス試験および寿命試験において、PICMA多層ピエゾアクチュエータは1,000億(1011)サイクル後でも元の変位の96 %を達成できることが示されました。このため、火星探査機「キュリオシティ」の観測機器には、数あるピエゾアクチュエータの中からこの多層アクチュエータが採用されました。
>> PIセラミックが火星探査機キュリオシティにピエゾアクチュエータを提供