異なるピエゾドライブアクチュエータ・ステージの仕様比較と用途

PI社には多くのピエゾ関連製品のラインナップがあります。その中で、ピエゾアクチュエータとピエゾステッピングドライブは同じピエゾにはなりますが、その特徴には大きな違いがあります。

一般的にピエゾ素子は、電圧をかけると素子が伸び、電圧を切ると元の長さに戻ります。この伸び量の最大は、通常ピエゾの長さの0.1%程度になります。また分解能はナノメートル以下を実現することが可能であり、数トンの荷重にも耐えることができます。これに加えて、潤滑剤や摩耗がなく、磁界の発生や影響がないことから、真空環境用途での位置制御、特に半導体装置や放射光施設で使われることが多くあります。

PIのピエゾアクチュエータPICMAは、その特殊な製造工程により、従来のピエゾアクチュエータよりも高い温度範囲まで使用が可能で、過酷な環境条件下でも長寿命を実現しています。

またこのPICMAはプリロードをかけることで動的な用途が可能になり、レバー拡大機構で最大数ミリの稼働距離が実現できます。さらにはセンサーを搭載しフィードバックすることで、ナノメートルの再現性を実現します。このようなピエゾステージは下記のようなラインナップがあります。

しかしながら、静的にある位置を維持する場合は、ピエゾ素子に電圧をかけ続ける必要があり、ピエゾステージとしてレバー拡大機構を使っても稼働距離に制限もできます。(通常1mm 以下程度)

ピエゾステージと同等の一桁ナノオーダーの分解能をもちながら、電源を切ってもその場を維持し、かつ移動距離1mmより長くできるソリューションとして、ピエゾステッピングドライブがあります。

ピエゾステッピングドライブは、ランナー上で直接動作するため、バックラッシュなどの機械的誤差がありません。また、静止後、電源オフ時にセルフロッキングが可能であり、電力を消費せずに位置に留まることができます。また通常のピエゾアクチュエータと同様、非磁場環境及び真空環境でも動作が可能です

ピエゾステッピングドライブのラインナップとその速度と発生力

ピエゾステッピングドライブの主な仕様の比較

Product NEXACT NEXLINE PICMAWALK
  N-310.xxx N-216.xxx N-331.xx
Travel range 10-125 mm 20 mm 25-100 mm
Step size 5 nm-10 µm 5 nm <10 nm
Velocity 10 mm/sec 0.4-1.0 mm/sec 15 mm/sec
Push/Pull force 10 N 300-600 N 50N
Holding force 12N 400-800N 60N
Operating voltage -10-45 V ±250 V -20-120 V
Size 60x25x12 mm 124x72x51 mm 99x55x31 mm (30 mm travel)

一方、PICMAなどの通常のピエゾアクチュエータと同程度の稼働距離で、静的に使うが電源を切ってもその場を維持したい用途の場合には、PIRestアクティブシムが有用です。恒温下での長期位置安定性に優れており、構造的にPI社のピエゾアクチュエータPICMAと同じであることから、真空や非磁性環境での動作が可能であり、お客様のサイズ制限や仕様に合わせて素子を成形することが可能です。また、通常のピエゾアクチュエータと同様に多軸ステージまたはヘキサポッドに応用が可能です。

ピエゾドライブアクチュエータ・ステージの主な仕様の比較を下記の表に示します。

ピエゾアクチュエータ、ピエゾステッピングドライブ、PIRESTの主な仕様比較

Product PICMA PICMA Preload Typical Piezo Stage Microscope Tip/Tilt Platform Piezo Stepping PIRest
  P-88x.xx P-45x.xx P-62x P-725 S-335 N-310.xxx P-131.xxx
Travel Range 6.5-32 µm 15-90 µm 60-1800 µm 150-460 µm ±17.5 mrad 125 mm 2-10 µm
Step size - few nm few nm few nm 1 µrad n nm <10 nm
Blocking Force Push/Pull force 3800 N 300 N/700 N 10 N 100 N/200 N - 300-600 N 4000 N
Selflocking No No No No No YesYes
Ultra high Vacuum Yes Yes Yes Yes Negotiable Yes Yes
Close loop Possible Yes Yes Yes Yes Yes Possible
Dynamic No YesYesYesYes No No

ピエゾアクチュエータ(PICMA)は動作距離が<100um以下と短くなりますが、早い整定とDynamicな動き(preloadの場合)が特徴になります。またコンパクトなのでお客様の用途に柔軟に合わせやすいことと、比較的廉価であることから半導体装置関係だけでなく、あらゆる位置決め用途に使われています。

 

PICMAを使ったピエゾステージになると、拡大機構が搭載されることにより、動作距離は最大で1mm程度まで可能となります。具体的な用途として、顕微鏡対物レンズのフォーカス用やサンプルステージや、AFM、SEMなど真空環境下でのサンプル位置決めにも使われます。さらに1軸だけではなく、3軸~6軸の動作も可能なので、光ファイバーの3軸アライメントや光学機器の位置決めなどにも使われています。Tip/Tilt platformについては、レーザー加工やレーザースキャン用にDynamicに動かす場合に使用されます。

ピエゾステッピングドライブは、ピエゾステージよりも速度が1-10mm/secと遅くなりますが、ピエゾステージよりも動作距離を長くすることが可能です。またピエゾステージよりもプッシュプルフォースが強く、電源OFF時のセルフロッキングが可能なので、真空中の半導体装置でのレンズの位置決めや、半導体検査装置、または特殊環境下でのレーザー光源用光学系調整にも用いられています。

PIRESTについては、動作距離が<10um以下と短いですが、電源OFF時のセルフロッキングが可能な比較的廉価なソリューションとして、シムに代表されるような、荷重、環境、機械的な整定後の位置変化を補正する必要がある装置に用いられます。

このように、ピエゾアクチュエータの中にもそれぞれの特徴があり、アプリケーションによってどれを選択するかが重要になります。ピーアイ・ジャパンの営業、技術担当者が、お客様の要求事項に応じてソリューションをご提案いたします。



この著者について

Takuma Yagi

General Manager, PI-Japan Co., Ltd.

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