非線形性
ピエゾアクチュエータの電圧依存変位曲線は、外的な分域の影響により、ヒステリシスの影響を受けやすい非線形性の強い経路をたどります。このため、特定の駆動電圧を用いて、微小変位から中間位置まで線形的に補間することはできません。こうした性質は、ピエゾセラミックの電気力学曲線および誘電大信号曲線に表れています(図1)。各グラフの原点は、熱的な非分極状態によりそれぞれ定義されています。
バイポーラの大信号曲線の形状はともに、電界の強度が抗電界EC となる強誘電体の極性反転プロセスにより決まります。誘電大信号曲線から、これらの反転点で非常に大きな分極の変化が起きることがわかります。同時に、極性の反転後は分極と電界強度の向きが再び同一となるため、セラミックは収縮から再度伸長に転じます。この性質から、電気力学曲線は特徴的な蝶形となります。電界が存在しない場合、残留分極Prem /-Premおよび残留ひずみSrem が残ります。
通常、ピエゾアクチュエータはユニポーラで駆動します。セミバイポーラ動作の場合、ひずみ振幅は大きくなりますが、変位信号の外的な分域部分が増加することにより非線形性とヒステリシスも増大します。
データシートには、公称電圧でのアクチュエータの自由変位が記載されています。
標準的な層の高さ
>> PICMA® Stack 60 µm
>> PICMA® Bender 20~30 µm
>> PICA Stack/Thru 0.5 mm
>> PICA Shear 0.5 mm
>> Picoactuator® 0.38 mm
実際に達成可能なコンポーネント自由変位は、力学的プリロード、温度、制御周波数、寸法、受動素材などの要因によって決まります。
圧電変形係数(ピエゾ係数)
非線形ヒステリシス曲線の2反転点間の傾きΔS/ΔEは、圧電大信号変形係数d(GS) として定義されます(図2)。曲線の進行経過からわかるように、一般にこの係数は電界強度とともに増加します(図3)。
予測変位の推定
図3の値を使用して、特定のピエゾ電圧で達成可能な変位を見積もることができます(>> ピエゾアクチュエータの変位の推定式を参照)。電界強度は、特定部品の層の高さと駆動電圧VPPから計算可能です。
ヒステリシス
オープンループ電圧制御動作では、ピエゾアクチュエータの変位曲線は強いヒステリシスを示し(図5)、このヒステリシスは通常、電圧または電界強度の増加とともに増大します。剪断アクチュエータやバイポーラ制御の場合、値は特に大きくなります。これは、信号全体において外的な極性反転プロセスの関与が高まるためです。
クリープ
クリープとは、駆動電圧が一定の場合における経時的な変位の変化のことです。クリープ速度は、時間とともに対数的に減少します。ヒステリシスの原因になるのと同じ材料特性が、クリープ挙動の原因にもなります。
