レーザーマイクロマシニングおよびマイクロプロセスの進歩

新たなモーション制御方法による精度向上と市場投入の迅速化

概要

レーザーマイクロプロセッシングおよびマイクロマシニングの経験豊かなシステムインテグレーターは、新しいアプリケーションの概念検証のデモンストレーションは難なく提供することができますが、その概念をソリューションに変えることはこれまでは簡単なものではありませんでした。その理由には以下が挙げられます。

レーザーパルスを高い正確性と再現性でワークピースに送ったり、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)ソフトウェアを開発、保守したりすることは、リソースを要する大変複雑な取り組みで、CAD/CAMの後処理やモーションプロファイル生成、ユーザーインターフェースやホストのプログラミング、モーションプログラミング、レーザー制御、リアルタイムIO制御などのさまざまなテクノロジーや領域が関係します。

新たに可能となったモーション/CNCコントローラーテクノロジーにより、上記の課題の多くが解決されました。複雑さが軽減され、設計者はマシンの市場投入を迅速化する一方で、同時にプロセスの精度を向上させることが可能になりました。

HMI開発プラットフォームによる市場投入の迅速化

レーザーマイクロマシニング/マイクロプロセス向けHMIソフトウエアは、マシンの重要なコンポーネントつまりサブシステムで、通常以下2つのいずれかに分類されます。

・CAMソフトウエアのポストプロセッサーによって作成されるマシンコードプログラム(通常G&Mコード)をインポートして実行するCNC方式のHMI。

・CADファイルのインポートと操作が可能で、統合されたCAM/後処理機能を提供する「統合グラフィカル」HMI

 

CNCスタイルHMI

 

多くのレーザーマイクロマシニングおよびマイクロマシニングシステムは、加工現場や製造現場で他の「従来の」CNCマシン(旋盤、フライス盤、ルーターなど)と共に使用されます。レーザーシステムのHMIと他の装置のHMIに共通性があることは、製造業者にとって有益です。なぜなら、製造業者の装置担当者や技術者がこれまでに培ってきた知識や経験を活用できるからです。

 

カスタマイズ可能なCNC HMI開発プラットフォームなら、以下のような多数の標準HMI機能を容易に提供することができます。

  • 標準RS-274規格およびユーザー定義のG&Mコードを含むNCファイルの読み込み、編集、実行する機能

  • 停止、保留、中止、単一ブロックの実行、ブロックスキップ、フィードレートホールド(図1)などの柔軟なCNCプログラムフローの制御オプション

  • プログラム実行、軸位置、フィードレート、G/Mコードモダリティ、アラーム、フォルトのリアルタイム監視

  • オペレーター、技術者、開発者、管理者向けの多層のユーザーアクセスログイン画面

 

 HMIホストアプリケーションとモーション/CNCコントローラーの統合に関連した以下の多くの課題も解決されています。

  • NCプログラムのダウンロード、コンパイル、実行時間の最適化

  • 「ミッドプログラムスタート」をサポートするためのG/Mコードモダリティの管理

  • 装置のフォルトおよびエラー状態の表示、処理、記録

    レーザーマイクロマシニングおよびマイクロプロセスの競争上の優位性は、多くの場合アプリケーション固有の機能と関連しています。名前が示すとおり、カスタマイズ可能なCNC HMI開発プラットフォームは、アプリケーション固有のHMIカスタマイズを容易にすることが出来ます。そのようなカスタマイズの簡単な例としては、カスタムタブ、カスタムボタン、カスタム画面があります。

    さらに高度なカスタマイズには、カメラやレーザーディスプレイスメントセンサーなどのプロセスの視覚化や他デバイスの統合が上げられます。

 

 

統合されたグラフィックHMI

 

フレキシブルプリント基板の穴開け およびカッティング加工、グラスおよびポリマーディスプレイの加工、半導体加工、精密光学部品製造、高精度積層造形などのアプリケーションで使用されるレーザーマイクロプロセッシングおよびマイクロマシニングシステムは、最先端研究所や製造現場で使用されます。このような場合、システムオペレーターはCNCマシンオペレーターではありません。統合グラフィックHMIは、CADファイルを直接取り込むことができます。このファイルからレーザーパスが定義され、対応するマシンコードが自動的に生成されて、モーションコントローラーで実行されます(図2)。したがって、個別のCAMソフトウェアや後処理ソフトウェアは必要ありません。

 

レーザーマーキング、ドリリング、エッチング、カッティング、積層造形などの特定プロセスのための機能が組み込まれたカスタマイズ可能な統合グラフィックHMI開発プラットフォームは、開発上の課題の多くを容易に解決することで、マシンの構築/統合担当者やエンドユーザーに多大な付加価値を提供します。

  • 幅広いCADファイル形式がサポートされており(DXF、DWG、Gerber、NC Drill、STLなど)、それらを簡単に操作して、モーションレシピ(スケール、ローテーション、チルトなど)を作成可能

  • すべての可動軸のパラメーターを、単一のウィンドウ/ロケーションから構成、監視可能

  • モーションフィードバックとレーザーステータスのリアルタイムの監視とデータ収集

  • カメラやガルバノスキャナーなどの頻繁に使用するデバイスをサポートし、HMI内で構成可能。新しいデバイスも容易に統合可能(新規ライブラリを一から作成する必要なし)

  • フルシミュレーション機能によりユーザーが予想レーザービームパスを確認し、予想処理期間を判別可能

CNC方式のHMI開発プラットフォームと同様に、統合グラフィックHMI開発プラットフォームもアプリケーション固有の機能に合わせてカスタマイズできます。


 

モーション性能の最適化とレーザー制御モジュールによる処理の精度と再現性の向上

多くのレーザーマイクロプロセッシングおよびマイクロマシニングアプリケーションでは、達成可能な精度と再現性を見極めるのに、モーション性能が非常に重要になります。モーション性能は、プロファイル生成(指令を受けたモーションパス)とサーボ性能(アクチュエータ/ステージが指令を受けたモーションパスにどの程度従うか)の両方の影響を受けます。現在の高度なモーション/CNCコントローラーは、以下のような高度なプロファイル生成機能とサーボ性能最適化機能を提供します。

  • 電力を最小限にするプロファイルの生成

  • モーションセグメント再構成とコーナースムージング(図3)

  • アダプティブサーボ制御アルゴリズム

  • 自動チューニングおよび性能特性評価ツール

  • 高度なPWMドライブテクノロジー


モーション性能に加え、位置ベースの出力同期もレーザーマイクロプロセッシングおよびマイクロマシニングの精度と再現性に大きく影響します。このタスクはこれまで、アクチュエータに物理的に接続されたモーション/CNCコントローラーやドライバーで処理されてきました。

しかし最近、専用のレーザー制御モジュールが使用可能となり、高い柔軟性と機能性でレーザートリガー(図4)やゲーティング(図5)の位置ベースの出力同期を提供できるようになっています。このモジュールは、モーション制御ネットワークに追加されると、ネットワーク内の任意の軸を組み合わせたモーションに基づいて同期出力を提供するように(ソフトウェアを通して)構成できます。このレーザー制御モジュールは、さまざまな「レーザー制御モード」で動作するように構成できます。したがって、幅広いアプリケーションを容易に構築することができるようになります。

レーザーパルスが外部の制御システムによって個別にトリガーされないアプリケーションの場合、ゲーティングモードを使用できます。そのようなアプリケーションでは、ゲーティング信号は通常、モーションセグメントまたはブロックの開始時と終了時に正確にオン/オフされますが、一方モーションパス上の任意のロケーションで行うこともできます。

パルス幅偏重(PWM)や周波数変調(PFM)など、出力制御のデジタル変調モードも可能です。さらに高度なアプリケーション用に、オペレーティングモードを同時に組合わせることが出来ます。(図6)

まとめ

 

 拡張可能な堅固なレーザーマイクロマシニングおよびマイクロプロセッシングプラットフォームの開発に関連した過去の課題の多くは、モーション/CNCコントローラープロバイダーの新しいテクノロジーによって解決することが出来ます。優れた加工性能を発揮すると同時に開発時間の短縮、最短期間での市場投入で大きな成果をあげることが可能です。